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CBDはてんかんに作用するのか?

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CBDのてんかんへの効果は以前より注目されていますが、今回は、そのメカニズムや臨床試験の結果、CBDを摂取する上での注意事項、CBDとてんかんにまつわる歴史など、さまざまな観点からCBDとてんかんについて説明していきます。

てんかんはどんな病気なのか

てんかんとは?

てんかんとは脳の一部の神経細胞の異常によって、痙攣を起こしたり、意識を失ったりする「てんかん発作」が繰り返し起こる病気です。

WHO (世界保健機構) によると世界で5,000万人の方がこの症状を抱えているそうで、日本でも100万人の患者がいると予想されています。

発作は、脳の一部の神経細胞が異常な電気活動を起こすことによって起こるとされていますが、その発作の出方によって、全般発作と部分発作に分けられます。

全般発作は、意識を消失し動作が止まって応答がなくなる、倒れて全身をけいれんさせるなど、患者は周囲の状況がわからないような状態となります。

部分発作は、意識がある場合もない場合もありますが、目の前がチカチカする、手足がピクピク動くなど、患者自身が感じられる症状となります。

てんかんの原因とは何なのか

てんかんの原因はさまざまで、生まれつきのものや、交通事故などの頭部外傷によっておこるもの、脳腫瘍や認知症によっておこるものなどがあります。

こうした原因が明らかなものは「症候性てんかん」と呼ばれています。

一方で、原因が明らかになっておらず、生まれ持った脳の性質によって起こるものを「突発性てんかん」と呼び、てんかん患者の6割を占めています。

その根本的な要因としては、遺伝的素因などの理由が考えられていますが、詳しいことはよく分かっていません。

てんかんの症状は患者によって違いがあるため、症状に合わせた治療をしなくてはなりません。

治療にはたいてい、抗てんかん薬が用いられます。患者の症状をみながら、複数の薬を組み合わせることもあります。

しかし、薬だけで発作が抑制されるとは限らず、食事療法を組み合わせたり、脳の発作の起こる部位を切除する手術などを行ったりする場合もあります。

睡眠不足やストレスの多い環境を避けることも、てんかん治療にはとても重要です。

てんかんはどの年齢層でも発病する可能性があります。しかし、特に小児と高齢者の方の発症率が高いと言われています。

ドラベ症候群

ドラベ症候群は乳幼児期に発症する難治てんかんです。

発症数は2~4万人に1人と非常に稀な病気ではありますが、その分発症者は深刻な状態となります。

1歳未満で最初の発作が起こるとされ、その後も発作を繰り返し、重篤な症状を示すこともあります。死亡率も高く、10人中1, 2人は成人になる前に亡くなるといわれています。

また、発作が繰り返されることで、運動や言語面などの発達の遅れが顕著に現れることも特徴です。発達を助けるには、治療によって発作をなるべく抑え、早期からの療育に取り組むことが必要です。

原因は遺伝子素因が大きく、特にナトリウムチャネル (細胞膜などに存在し、ナトリウムイオンを輸送するタンパク質) の異常が多くの患者にみられます。

レノックス・ガストー症候群

レノックス・ガストー症候群は、フランスの同名の学者2人によって提唱されたてんかん症状です。
幼児期から小児期に発症し、正確な発症数は分かっていませんが、10万人あたり20~30人程度であると言われています。

症状としては、強直発作などの特徴的なてんかん発作が何種類も出現し、脳波を調べると独特な異常な波がみられることが特徴です。また、知的障害も発症者のほぼ全員に出ます。80~90%の人に知的障害が残り、重度になる率もかなり高いです。

脳形成の異常、生まれる前後の脳への酸素や血流の阻害、脳損傷などによって発症することがあります。しかし、はっきりした原因が分からない患者も多くいます。

レノックス・ガストー症候群の根本的な原因として、遺伝的素因があると考えられています。ただし、遺伝によって必ず発症するというわけでもなく、家族間で同様の症例が出ることは稀とも言われています。

てんかん発作は難治のことが多く、成人後もてんかんの症状が残ることも珍しくありません。

CBDやCBDオイルはてんかんに作用する?

患者の生活の質の向上が見られた

近年行われた研究では、CBDを使用したてんかん患者と、使用していない患者の生活の質の変化が観察されました。

結果、CBDを使用している患者は使用していない患者と比較し、

・うつ・不安などの精神状態
・睡眠の質

の向上がみられました。

さらには

・抗てんかん薬の容認性が大幅に向上
・処方薬の使用量が減少
・医療利用率の低下

などといった結果もみられ、CBDがてんかん患者の生活の質の向上に貢献しているという結果が示されました。

難治性小児てんかんの発作頻度の減少

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2016年には、難治性小児てんかんに対するCBDの効果を調査する実験が行われました。

難治性てんかんは、先ほどお伝えしたようにてんかんのなかでも医薬品を使用しても効果が出ず、発作が止まらないものをいいます。

この実験ではCBD:THC=20:1を含有するオイルを難治性てんかんと診断された1~18歳の子供74人に与えところ、なんと89%が発作頻度が減少するという結果が得られたのです。

さらに、行動と、言語、コミュニケーション、運動能力、睡眠も改善が見られました。

CBDがてんかんに効果があるとされる理由

CBDがなぜてんかんに効果があるのかの議論には、さまざまな意見があります。

ひとつには、エンド・カンナビノイド・システム (ECS) という生体システムの関与が考えられます。

ECSは生体のあらゆる部位に存在するカンナビノイド受容体を介して起こるシグナル伝達経路であり、生体の様々な機能・恒常性の調節を行いますが、脳神経系にも大きく関与しています。

つまり、CBDがこのECSの働きを調節し、脳神経に異常信号が起こることを防ぐことで、てんかん発作を抑えているとも考えられます。

一方で、別の受容体への親和性が確認されています。

そのひとつとして挙げられるのが、バニロイドレセプターと呼ばれる受容体ファミリー (同様な構造や性質をもつ受容体の種類) の一種であるTRPV1です。

TRPV1はカルシウムイオンの輸送に関わり、てんかん発作などの原因となる神経興奮を引き起こし得るともいわれますが、マウスを使った実験で、CBDがTRPV1の働きを調節し、発作を抑えることが示唆されています。

 

次の例として、セロトニン受容体である5-ヒドロキシトリプタミン (5-HT) が挙げられます。

セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれ、5-HTはうつや不安障害の治療にも注目されている受容体ですが、実はてんかんにも大きく関与しているのではないかという説もあります。

CBDは5-HTの種類である5-HT1A, 5HT2Aとの相互作用が確認されています。

てんかんと5-HTの関連については詳しいことは明らかになっていませんが、CBDの5-HTへの相互作用によって抗てんかんが期待できるのでは、と考える専門家もいます。

このように、CBDはECSに関わることはもちろん、他の複数の受容体とも相互作用します。

それらのメカニズムのいずれかが抗てんかんに貢献しているということは、大いに期待できるところです。

詳しい作用機序はまだ明らかになっていない部分が多いので、今後の研究結果に期待していきたいです。

臨床試験や研究

CBDがてんかんにどれほどの治癒効果を与えるのかを調べるため、これまでにも複数の臨床調査が行われています。

2016年に行われたアメリカの調査では、200人以上のてんかん患者を対象 (ドラベ症候群やレノックス・ガストー症候群を含む) に、CBDを経口投与する実験を行いました。

その結果、被験者うち64%に有意な発作の減少がみられました。

ただし、この実験では傾眠、食欲低下、下痢、疲労を含む、好ましくない結果が確認された人もいました。また、若干数ではありますがこれ以上の治験が危険だと判断され、治療を取りやめた患者もいました。

このように、CBDはてんかん治療に大いに期待が持てる物質ではありますが、患者それぞれに具体的にどのような影響を与えるのかは、未知の部分が多いのが現状です。

欧米ではこれまでにもたくさんの臨床実験が行われ、今後も計画されています。

研究を積み重ね、より詳細にデータを収集し検証することが望まれます。

 

CBDやCBDオイルを摂取する際の気をつけたい事

てんかんへの効果が期待されるCBDやCBDオイルですが、購入したり摂取したりする際の注意点がいくつかあります。

副作用や薬との併用に注意する

CBDは基本的に無害で安全と言われていますが、生体の機能にさまざまな関与をする物質である以上、副作用がないわけではありません。

健康な人ならともかく、持病を抱えていれば予想外の悪影響が出てしまう可能性も否定はできません。

よって、てんかんの方がCBDを摂取する際には自身の健康に十分注意し、万が一体調がおかしいなどの異変を感じたら、摂取を中断するなどの対応が望ましいです。

また、治療薬を処方してもらっている場合は、より注意が必要です。

CBDは一部の薬と薬物相互作用することが報告されています。

特に肝臓内で代謝・分解されるタイプの薬剤との相互作用が大きいとされています。それは、肝臓内に存在するシトクロムP450という酵素群の働きを、CBDがブロックしてしまうためです。

実際にてんかん治療薬の中には、エトスクシミドやクロバザムなどシトクロムP450による影響を受けるものが存在します。

ただし、クロバザムとCBDを併用した際、クロバザムの処方量を減らしたにも関わらず患者の発作程度や頻度が減少し、むしろ薬効が上がったことが示唆されるデータもあります。

必ずしも悪影響が出ることが確認されているわけではありませんが、やはり薬の薬理効果や強さを変えてしまうのは事実ですので、CBDとの同時摂取には十分注意しなくてはなりません。

先ほど紹介した臨床実験でもCBDによって、てんかんの症状が改善された人がいた反面、好ましくない結果が確認された人もいました。

てんかん薬を処方されている方は、CBDの摂取をしたい旨を医師に相談し、適切なアドバイスをもらうようにしてください。

CBDオイルを選ぶ上で大切なこと

CBD自体は健康に良く合法であるといっても、CBDを配合して作るCBD製品がそうであるかどうかは詳しく調べる必要があります。

CBD以外の混合物に悪いものがあったり、日本では違法とされるTHCが含まれている製品が流通している可能性がゼロではないためです。

そのため、購入・使用を検討しているCBDオイルなどの品質や安全性、合法であるかどうかの確認は、消費者が責任をもって行わなければなりません。

メーカーのウェブサイトなどに、検査によって安全性を確認している、という情報が書かれています。また、検査結果自体を公表している場合もあります。

合法性については、日本ではTHCが検出できる製品は違法ですので「THCフリー 」であることが絶対条件です。

THCフリーであるかどうかの情報は、ウェブサイトやCBDオイルのラベルに書かれていますので、必ず確認するようにしてくだい。

エピディオレックス

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近年、CBDが難治性てんかんも含めたてんかんの諸症状に非常に効果があることを受け、CBDのてんかん薬が発売されました。

それが、GWファーマシューティカルズというイギリスの医薬品企業が開発した、エピディオレックス (Epidiolex) という薬です。

エピディオレックスは、大麻由来のCBDを主成分にした薬品です。アメリカでは、ドラベ症候群やレノックス・ガストー症候群などの難治性小児てんかんの指定医薬品として、2018年に承認を受けています。

ただ、日本ではまだ医療大麻の認可は下りておらず、エピディオレックスの処方も認められていません。

しかし、難治性てんかんの特効薬として注目を集めており、現在エピディオレックスなどのCBD医薬品の処方を認めるよう、多くの団体や組織が呼びかけています。

2019年は、聖マリアンナ医科大が難治性てんかんの治療薬の臨床試験 (治験) を認めるよう、厚生労働省に申請を行いました。

次に、日本てんかん協会、ドラベ症候群患者家族会、日本小児神経学会、日本てんかん学会が連盟で、エピディオレックスの早期承認を求める要望書を厚生労働省副大臣宛に送付したと発表しました。

さらに、日本臨床カンナビノイド学会が、カンナビノイド医薬品の治験の実施について全面的に支持・協力をすると宣言しています。

最後に

このように、近年では日本でもCBD医薬品の許可を求める動きがあります。近い将来、エピディオレックスをはじめ、CBD医薬品の処方が認可される日が来るかもしれません。

CBDが、日本でもてんかんに苦しむ方の助けになる日が訪れることを期待したいですね。

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